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老.老介護の現実

私は職業柄いろんな家庭を訪問し、いろんな人達と会話をする機会に恵まれて約半世紀。



いろんな事が有りました。いろんな状況も見たり経験もして参りました。

格言う私も今年で79年と言う年月を重ね糖尿病、糖尿病から来る心臓病を患いましたが

幸いな事に現在医学の力で投薬しながら自分の力で動く事も出来ますし車の運転も出来

医学と薬、又皆様のご協力によって仕事のお手伝いも出来ています。

 

先日も90歳を越えた御夫婦の所にLED電球の取替にお伺いしました。

92歳の御主人が90歳の認知症の奥さんを看ると言う、世に言う老.老介護のご家庭でした。

此処では私が今迄に経験した事のない厳しい現実を知る事になりました。

このお家は週2~3日に一回、ヘルパーさんのサービスを受けているがヘルパーさんは余り奥様が喜ばないので出来るだけ自分がやらねばと思い一生懸命やっている。

しかし自分も最近は身体が思う様に動かず止むを得ずヘルパーさんに頼む様に成るのだとの事。

 

こうして施設泊などした後は奥様が自宅に帰った後も落ち着かず夜になると家に帰る

家に帰りたいと言う。

「ここは貴女の家ですよ。ほら私、私はお父さんですよ。」と何度、説明しても

なかなか意志の疎通がうまく行かず、夜通しウトウトしながら朝を迎える事もありますとの事でした。

只3~4日するとこの症状は徐々になくなり落ち着いてくるとの事でした。

 

又ある時などは私の訪問を知った御主人が「ハイ、ああ電気屋さん、どうぞ」との声で

私は家の中に入らせて頂きました。

御主人が「母さん、お客様じゃけん一寸待ってね。」と言って奥さんから離れて私に

用件を伝えに来られました。私も手短に用件を聞きました。

その間約2分位だったと思います。その間奥さんは大きな声を出しておられましたので

御主人を呼んでおられたのかも知れません。


御主人様「ハイハイ、お待たせしました。ハイ、来ましたよ。」と言って横に座った途端

ビシッ!!と鈍い音と共に御主人の顔に奥様の拳が飛んでいました。

その拳はどう見ても加減をした拳ではなかったと感じました。

 

拳を受けた御主人「ああ、痛い。どうしてそんな事するの?○○ちゃんがたたくので

お父さんは痛いわい。」と言いながら奥さんの世話をしておられました。

○○ちゃんは奥様の名前だと思います。

いずれにせよあの状態を90歳を越えた御主人がニッコリ笑って受け止めている。


その姿を見た時私は次に出す言葉に詰まりました。

御夫婦が落ち着かれるのを待って御主人に「大変ですね。痛かったでしょう。」と

お尋ねすると「イヤイヤ、これが私の天命だと思っています。あれは私にだから出来たと

思うんです。私にだから本心で私に手を掛けている。ここで加減をされたら本当の介護は

出来なくなると思います。」


今の奥さんの心理状態で加減する、気を使う、などする様になると次には行きたくない

したくない・・・・。施設泊などで不安定になるのはこう言った気を使う所から来るのではと思っています。従って私はこれで良いと思っています。


いつまでも気を使う事なく私と向き合って居てくれればそれで良い。

私も私の命が続く限り家内の面倒は私が見ます。いや、見なければなりません。

それが夫婦じゃないんですか?

私は思わずアッパレ御主人!!と。

加齢で小さくなった御主人の身体が大きく見えた一瞬でした。

 

本、老.老介護は次回も続きます。

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